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Flash Playerの栄枯盛衰

コールセンターコラム

 9月に入り、秋分の日を控え、猛暑だった夏がやっと過ぎたとはいえ、まだ残暑が続いておりますが、読者の皆様はいかがお過ごしでしょうか。

 

 都会に住んでいると、夜になってもヒートアイランド現象の影響か、秋の涼しさをなかなか感じることが出来ないのですが、公園など自然のあるところへ行ってみると、鈴虫の鳴き声が聞こえてくることがあります。

 気温はともかく、こんな時に、季節は秋であることを情緒豊かに知るのでしょう。

 

 ところで、Windows10の3回目の大型アップデートである、「Creators Update」が去る4月11日に公開されてから約5か月。 この5か月の間、自動更新の機能により、エンドユーザー様のお手元にあるWindows10搭載PCへは「Creators Update」が配信され、適用されたことと思います。

 

 このアップデートは、2017年9月現在で最新のものです。すでにお気づきの方もおられるかと存じますが、実は、これまで搭載されていたアプリの一部が、この「Creators Update」からはサポートされなくなりました。

 

 まず、Windows95からずっと慣れ親しまれた「ペイント」は「ペイント3D」に置き換わり、「リーダー」はMicrosoft Edgeに機能を譲りました。 同じく、無償動画配信の勇であり、今では当たり前のようにあり、誰もが観たい動画を検索するとたどり着く、「You Tube」の動画配信の核として利用されていた「Flash Player」がCreators Update以降のMicrosoft Edgeでは、既定のプログラムではなくなりました。

 

 Flash Playerが既定のプログラムではなくなった理由についてはいろいろな要因があるのですが、まずはざっと、Flashの歴史を振り返ってみましょう。

 

 現在、Adobe社が提供している(が、2020年12月31日をもって、Flashプラグインのアップデートと配信を終了することを発表済み)Flash Player及びFlashプラグインは元々、1996年に「Macromedia」社が「Shockwave Flash」として発表したのが始まりです。

 (Macromedia社は2005年4月、Adobe社に買収され、現在に至っています。)

 

 1996年と言えば、Windows95が登場し、世界中に大ブームを巻き起こした翌年であり、インターネットの可能性が、これから大きく広がろうとしていた時代でした。

 

 続いて、1997年に発表された「OSR2」シリーズにはInternet Explorer(4.0)がWindowsシステムに統合されて搭載されるようになり、更に簡単にインターネット(当時はダイヤルアップによるプッシュ回線を利用した方法)が利用出来るようになりました。

 この拡大の波に乗り、以前は「新聞記事」のようにただ「読む」だけの存在でしかなかったホームページに革新的な動的コンテンツを与えたのが、「Shockwave Flash」だったのです。

 

 「Shockwave Flash」は、(Windows)PCという箱の中で、大きな役割を担いました。 要は、「Shockwave Flash」の歴史は、パーソナルコンピュータの発展と歩調を合わせて進み、拡大していった、と言えます。

 

 ところが、21世紀に入り、IT業界には革命が起こりました。 それは、スマートフォン、特にその先駆けである、「iPhone」の登場です。 「iPhone」の登場は、それまで揺るがぬITの牽引者だった「PC」の土台を揺らしたのです。

 

 これは、スマートフォンとPCの所有率の数位を表すグラフです。

 (総務省ホームページより http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc252110.html)

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この表を見て頂くと一目瞭然なのですが、2015年にはスマートフォンの所有率はPCに迫ろうとしています。スマートフォンの普及率の勢いは群を抜いているのです。

 

今度は、インターネット利用端末の種類について見てみましょう。

 (総務省のホームページより、URLは同上。)

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これも2015年のデータですが、スマートフォンとタブレット型端末を合わせると、その利用率はPCを追い抜きます。

 この事実は、インターネットに最も利用される電子機器が、今では「PC」ではないことを如実に物語っているのです。

 

 では、このスマートフォンとタブレットの飛躍が「Shockwave Flash」にどのような影響を与えたのでしょうか。

 

 これは有名な話ですが、当時は飛ぶ鳥を落とす勢いだったAppleのCEO、スティーブ・ジョブスが2008年3月4日、株主総会で「iPhoneでFlashをサポートするつもりはない。」と発言し、大きな波紋を呼びました。

 http://www.eweek.com/mobile/jobs-flash-is-too-much-for-iphone

 この発言に興味のある方は上記URLを訪れてみてください(ただし、全文英語です)。

(eWEEK Jobs: Flash Is Too Much for iPhone)。

 

 このことでAppleと、Flash Playerを提供しているAdobeは侃々諤々と議論を交わすのですが、折り合うことなく、2010年にはついにFlashは完全にiOSから排除されました。

 この一連の流れについては、「Gigazine」 2011年11月10日のページで特集が組まれていますので、興味のある方は以下のURLを訪れてみてください。

 http://gigazine.net/news/20111110_flash_history/

 (Gigazine これまでのFlashを巡る苦難の歴史「Adobe」vs「Apple」)

 

 AppleがFlashを排除したのにはAppleなりのいくつかの理由があるのですが、詳細をここで述べることは差し控えます。

 しかしこのことは、確実な将来性を持つインターネットに接続可能な電子機器で、Flashがサポートされないことが明白となり、この分野での成長が全く見込めなくなったことを決定づけました。

 

 これに追い打ちをかけたのが、2015年7月上旬に発見された、Adobe Flash Playerのセキュリティ脆弱性でした。

 

 このとき、発見されたセキュリティ脆弱性の数は3つに上り、IPA(情報処理推進機構)が7月13日に急遽、「一時的にFlashのアンインストールや無効化を実施」するよう、異例ともいうべき注意喚起をしたくらい、世間を騒がせたのです。

 

 そして、2014年10月に正式リリースとなった「HTML5」の登場が、その便利さと安全性を武器にして、動的コンテンツとしての王座をFlashから奪い取りました。

 なぜHTML5が安全かというと、HTML5はプラグインを利用することなく、拡張されたタグ(<video>)を利用することで、ホームページに動画を載せることが出来るからです。

 

 タグとは簡単に言うと、ホームページを構成するための命令言語なのですが、ここでは詳細の説明を差し引かえます。興味のある方は、以下のURLを訪れてみてください。

 https://techacademy.jp/magazine/4843

 (TECHACADEMY magazine 「いまさら聞けない!HTML【初心者向け】」)

 

 こうして、「Shockwave Flash」は時代の波に飲まれ、終焉への道を進んでいきました。

 

 コールセンターへ頂くお問い合わせの中には、「インターネットでYou Tubeを見ようとすると、Flash Playerが最新ではないと言われてしまう。」という内容があります。

 

 私どもで可能な対応は正直なところ、Internet Explorerのリセットをすることくらいになるのですが(たいていはこれで改善する)、You Tubeを含めた動画配信サイトは、配信の技術を「HTML5」へ順次移行しています。

 また、「HTML5」はWindows7搭載のInternet Explorerには対応していません。

 

 日進月歩のインターネットの世界では、かつて栄華を極めたものが綻び、すたれ、気がつけば、新しいものに取って代わられます。

 それは、その時代の必要に応じて淘汰される、と言えるでしょう。

 

 OSのお話しではないですが、新しいものが全て古いものに勝っている訳ではありません。

 しかし、古いものがその古さ故、問題が発生し、新しい技術に押され、消えていくことも自然淘汰と言えるのかもしれません。

 

 今後、インターネットで動画を視聴される際は、少しで結構ですから、利用されている技術について興味を持って頂けたとしたら、今回の記事はお役に立てたと思う次第です。