JC-STARとは? IoT機器を選ぶ際のセキュリティの目安

ネットワークカメラ、スマート家電、見守り機器、Wi-Fiルータなど、インターネットにつながる「IoT機器」は暮らしや仕事を便利にする一方で、不正アクセスや情報漏えいの入り口にもなります。
実際、情報通信研究機構(NICT)が運用する大規模観測網では、2025年に約7,010億パケットのサイバー攻撃関連通信が観測され、過去最多を記録しました。家庭用ルータや防犯カメラの録画機器など、利用者が感染に気付きにくい機器が引き続き狙われています。
こうした機器を選ぶときに、セキュリティ対策の状況を確かめる目安となるのが、2025年3月に始まった国の制度「JC-STAR(ジェイシースター)」です。
本記事では、JC-STARの仕組みや★1〜★4のレベルの違い、ラベルの確認方法、ラベル付き製品を安全に使い続けるためのポイントまでわかりやすく解説します。IoT機器の選定や運用をご検討中のご担当者様は、ぜひ参考にしてください。
1. JC-STARとは?
1-1. 製品の安全対策をラベルで「見える化」する制度
JC-STAR(セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度)は、IoT製品が定められたセキュリティ要件を満たしているかを確認し、適合した製品にラベルを付与する制度です。経済産業省が2024年8月に公表した方針に基づき、情報処理推進機構(IPA)が運営しています。
制度ができた背景には、「メーカーは自社製品の対策を伝えにくく、購入者もその良し悪しを判断しにくい」という課題がありました。要件は欧州規格ETSI EN 303 645や米国NISTIR 8425など海外の基準とも整合が図られています。
運用は2025年3月25日に始まり、同年5月21日に最初の★1ラベル取得製品が公表されました。政府機関向けガイドラインでも活用が進められており、IoT機器の選定基準に★1取得相当を含める方針が示されるなど、調達の場面でも活用が広がりつつあります。
1-2. 星の数でわかる4段階のレベル
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レベル | 位置づけ | 評価の方式 | 主な想定利用者 |
★1 | すべてのIoT製品に共通する最低限の要件 | メーカーの自己適合宣言 | 一般家庭・企業 |
★2 | 製品の種類ごとの特徴を踏まえ、★1に基本要件を追加 | メーカーの自己適合宣言 | 一般家庭・企業 |
★3 | ★1・★2に加え、重要システム向けの要件 | 第三者評価機関による評価 | 政府機関、重要インフラ、自治体、大企業 |
★4 | ★3よりさらに高度な要件 | 第三者評価機関による評価 | 政府機関、重要インフラ、自治体、大企業 |
ラベルは★1〜★4の4段階で、星が多いほど高度な要件を満たしていることを示します。★1・★2はメーカー自身が基準に沿って評価する「自己適合宣言」、★3・★4は第三者の評価機関による評価に基づいて付与されます。
自己適合宣言でも、基準への適合に疑義があればIPAが検査を行い、ラベルが取り消されることもあります。★3については、ネットワークカメラと通信機器を対象とした要件が2026年に公開されています。
2. ★1ではどんな点が確認されるのか
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分野 | 確認される主な内容 |
ログイン・パスワード | 適切な認証によるアクセス制御、初期パスワードの基準、パスワード変更機能、総当たり攻撃への耐性 |
ソフトウェア更新 | 更新機能の有無、分かりやすい更新手順、更新データの改ざん確認、セキュリティ修正の優先方針 |
通信・データの保護 | 保存データの安全な保管、通信の盗聴対策、不要な接続口の無効化と脆弱性検査、データ削除機能 |
メーカーの体制・情報提供 | 脆弱性の受付・開示方針の公開、型番の表示、セキュリティ情報の提供 |
★1では16項目の基準が定められており、パスワード、アップデート、データ保護、メーカーの情報提供といった、IoT機器の基本的な守りが確認されます。
特に、長く使われる家庭用機器では、購入後に見つかった弱点をソフトウェア更新で直せる仕組みが重要です。★1はその仕組みと、メーカーが更新を出し続ける体制の両方を確認対象にしています。
3. ラベルの見方と確認のポイント
ラベルは製品本体、パッケージ、取扱説明書、メーカーのWebサイトなどに表示されます。ラベルには星の数と登録番号のほか、IPAが管理する製品情報ページにつながる二次元コードが入っています。製品情報ページでは、メーカー情報やアップデート・脆弱性情報、問い合わせ先を確認できます。
購入時は、次の3点を確かめると安心です。
- 有効期限内か: ラベルの有効期間は原則2年です。製品情報ページの「適合ラベルステータス」が「有効」になっているかを確認しましょう。
- 本物のページか: 二次元コードの読み取り先が「jc-star.ipa.go.jp/conformance/」で始まるかを確認します。偽造ラベルの場合、IPA以外のページに誘導されます。
- 型番が一致しているか: 製品情報ページに記載された型番に、手元の製品の型番が含まれているかを確認します。
なお、ラベル取得前の製品に「JC-STAR適合予定」「適合ラベル取得申請中」などと表示することは、IPAが認めた仮登録番号がない限り不正な表示とされています。また、ラベル付きでも極端に安い製品は模倣品の可能性があるとIPAは注意を呼びかけています。ラベル取得製品の一覧はIPAのWebサイトで公開されています。
4. ラベルがあっても、利用者の対策は欠かせない
ラベルは製品選定時の重要な判断材料になりますが、IoT機器のセキュリティは購入した時点で完了するものではありません。
ネットワークカメラやWi-Fiルータ、見守り機器などのIoT機器は、一度導入すると数年単位で利用されることが一般的です。その間に新たな脆弱性が発見されることもあり、購入時には問題のなかった機器でも継続的な管理が求められます。
そのため、機器を選ぶ際には「どの製品を導入するか」だけでなく、「導入後も安全な状態を維持できるか」という視点を持つことが大切です。JC-STARは製品のセキュリティ対策状況を確認する目安になりますが、安全な運用を継続するためには利用者側の取り組みも欠かせません。
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- 初期パスワードを推測されにくいものに変える: ラベル付き製品は初回設定時に変更を求められますが、簡単な文字列にすると逆効果です。
- ファームウェアを最新に保つ: 自動更新機能があれば有効にし、ない場合は定期的に更新の有無を確認します。
- 使わない機能は無効にする: リモートアクセスなどのオプション機能は、必要なときだけ有効にします。
- サポート終了後は買い替えを検討する: サポート終了後はセキュリティ更新が提供されなくなる場合があるため、買い替えも検討しましょう。
JC-STARラベルは、最低限満たしてほしい水準を確認するもので、完全なセキュリティを保証するものではありません。IPAも、セキュリティ機能が「備わっている」ことと「安全に使い続けられる」ことは別だとしています。導入後は上記の対策を習慣にしましょう。
また、企業や自治体では機器を長期間運用するケースも少なくありません。導入時には十分な機能を備えていても、メーカーによるセキュリティ更新の提供が終了すると、新たな脅威への対応が難しくなることがあります。そのため、JC-STARラベルの有無だけでなく、メーカーのサポート期間や更新提供方針についてもあわせて確認しておくと、長期的な運用リスクを抑えやすくなります。
ルータやネットワークカメラの具体的な設定方法は、総務省などが運営する「NOTICE」のページも参考になります。
5. まとめ:選ぶときも、使うときもセキュリティを意識しよう
- 選ぶとき: 価格や機能に加え、JC-STARラベルの有無・レベル・有効期限、メーカーのサポート期間を確認する
- 確かめるとき: 二次元コードからIPAの製品情報ページを開き、ステータスと型番をチェックする
- 使うとき: パスワード変更と継続的なアップデートで、「つないで終わり」にしない
IoT機器を選ぶときは、価格や機能、使いやすさに加えて、JC-STARラベルの有無とレベル、有効期限、メーカーのサポート期間にも目を向けましょう。そして機器を「つないで終わり」にせず、パスワード変更と更新を続けることが大切です。
選定から運用まで一貫してセキュリティを意識することが、安心できるデジタル生活・業務環境につながります。
IoT機器のセキュリティ対策は、製品選定から導入後の運用まで継続的な取り組みが求められます。
当社では、ネットワーク機器やモバイル端末の導入支援、キッティング、運用サポートなどを通じて、企業のIT環境整備を支援しています。IoT機器の選定や運用についてお困りの際は、お気軽にご相談ください。
出典・参考資料
- 情報通信研究機構(NICT)「NICTER観測レポート2025の公開」2026年2月5日
- 情報処理推進機構(IPA)「セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度(JC-STAR)」
- Impress Cloud Watch「IPA、IoT製品のセキュリティ要件適合を評価するラベリング制度「JC-STAR」を運用開始」2025年3月
- Impress INTERNET Watch「IPA、JC-STAR「★1」適合ラベル交付開始」2025年5月
- PwC Japan「JC-STARコラム」
- IPA「適合ラベルの確認方法」2026年5月13日更新
- IPA「★1(レベル1)適合基準・評価手順」
- NTTドコモビジネス「JC-STARラベル取得アシスト(★1認証項目一覧)」
- IPA「適合ラベル取得製品リスト」
- 総務省ほか「NOTICE:ルーター/ネットワークカメラの安全な管理方法」
※ 各ページの内容は2026年10月8日時点で確認しています。
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